PCCでは、瀧谷洞研究のためのルート整備、ルート確認を目的として2024年5月12日(日)埼玉県にある 「瀧谷洞」にて、ケイビングを行いました。
今回はルート整備チームと測量チームに分かれての活動でした。
ルート整備チーム:L林田、SL今野、白石
測量チーム:L臼倉、SL川崎、飯島、小竹
ルート整備チームの記録
ルート整備チームは第一洞口から9:15に入洞。今回はマキタのハンマードリル2台体制(今野と林田が所持)で臨む、ルート整備回です。主に今野と林田がアンカーを打ち、白石がサポートに回ります。
ルート整備チームでは、
- 最初のホールのSRT支点再構築
- 無限チムニー上部のSRT支点再構築
- 獣骨ホールのSRT支点再構築
を行いました。
まずは、最初のホールのSRT支点再構築です。
<問題1>
これまで最初のホールをSRTで下降するために、壁付きロープに3つのローププロテクターを取り付けていました。これだとロープが痛む上、下降に時間がかかってしまう問題がありました。
<解決策1>
そこで、最初のホール上部からロープを垂らし、ディビエーションでロープが壁に接触しないように再構築しました。最初のホール上部のナチュラルプロテクションでバックアップをとり、岩壁に2つのアンカーを設置し支点としています。これにより、ロープが一切壁に接触することなくSRTできるようになりました。SRT開始地点はテラスを少し下った場所に移設したため、ビレイ用のアンカーも1つ設置しました。
<問題2>
これまで、最初のホールを登るSRTも支点近くが壁付きとなってしまっていました。これだとロープが痛んでしまいます。また、壁付き箇所が登りづらく、時間がかかってしまう問題がありました。
<解決策2>
そこで、手前に1つアンカーを設置し、既存の支点と組み合わせることで壁付きにならないように再構築しました。これにより、ロープが一切壁に接触することなくSRTできるようになりました。
次に、無限チムニー上部のSRT支点再構築です。
<問題3>
無限チムニー上部からのSRT下降は距離が長い(50m近くある)にも関わらず、ロープが岩に接触する部分がありました。安全上、一切岩に接触しないことが望ましいです。
<解決策3>
無限チムニー上部はムーンミルクと石灰に覆われていたため、それを一部剥がして母岩を露出させ、アンカーを2つ設置して新たな支点としました。既存の支点はバックアップ用にそのまま利用しています。
良い場所に古いボルトも打ってあったのですが、サビのため利用することができませんでした。
この対応を行った結果、上部での岩との接触は無くなったものの、中腹(見晴らし台の上あたり)での接触は引き続きある状態となりました。下降時に当該箇所でロープの痛みを発見したため、結び目を作って傷んだ箇所を回避する措置をとりました。
特別な理由が無い限りこのルートは利用せず、次回以降ハンガーやロープを回収したいところです。
最後に、獣骨ホールのSRT支点再構築です。
<問題4>
獣骨ホールでは、ロープが直角に曲がり、岩に擦れてしまうようなSRT支点となっていました。これまではローププロテクターで対応していたのですが、それでもロープの痛みが気になる箇所となっていました。
<解決策4>
右側のテラス(処女の池開拓時のルート)を少し行った先から降りるようにできないかと検討したのですが、岩壁にひび割れが見られ、剥がれる危険性があったためテラス下部側面へのアンカー設置は断念しました。
そこで、元々下降していた箇所の下部側面にアンカーを2つ設置し、荷重がかかる部分が直角に曲がらないようにしました。SRTに利用するロープは元のロープをそのまま利用しており、既存の支点はバックアップ用に残しています。
ロープや残置プロテクターもあり少しごちゃついているため、次回以降整理したいと考えています。
ボルトを打ちアンカーを設置する活動は以上ですが、白石が途中の待ち時間を利用して、最初のホールの木のハシゴの一部搬出作業を行いました。
また、コの字ホールから白いすべり台経由見晴らし台までのロープの長さを確認しました。ここには前回の活動で50mロープを張っていたのですが、見晴らし台での残りの長さが7mほどとのことで、今回30mロープへの付替えは行いませんでした。
出洞は15:00。慣れない内容の活動でもあり、予定を少し超過しての出洞となりました。
ハンマードリルを使ったボルト打ちで気がついたことは以下のとおりです。
- 非常に多くの粉塵が舞うため、ゴーグルとマスクが必要
- 慣れれば1つ5分でアンカーを設置可能
- 母岩を露出させたり、岩肌を整えたりする目的で、「はつり」機能のあるモデルが望ましい
今回の活動で、瀧谷洞手前部分の安全性を大きく向上することができました。これからも、けが人を出さずに活動を継続したいと思います。
(林田 記)
測量チームの記録
測量チームでは、「Fホール」から「すり鉢状の穴」ルートの測量を行った。
08:30第三洞口より入洞。洞内河川をさかのぼり、登竜門の滝の下に到着。
臼倉が先陣を切って滝を登り、ロープを設置してくれた。他メンバも順番に滝を登る。
いつもならあまり濡れずに登れるらしいが、今日は水量が多いとのことで、この時点で全員ずぶ濡れとなった。
先に進み、高さのあるチムニーなども恐る恐る通過して「Fホール」に到着。
「Fホール」で簡単に食事と装備の準備を行ったのち、「すり鉢状の穴」ルートへ進んだ。
「すり鉢状の穴」ルートを中間地点まで進んだところで、チョックストーンの下部に川崎が小獣の骨を確認した。30年ほど前に今回不参加の濱田がこの場所で骨を目撃しており、その時は頭蓋骨も発見したとのことであったが、今回は頭蓋骨は見つけられなかった。
この場所から3Dスキャン作業を開始。小竹が中間地点より奥側、川崎が戻りながら「Fホール」までを担当し、分担して3Dスキャンを行った。
臼倉は中間地点で「すり鉢状の穴」へ降りるためのロープを設置してくれたのち、待機してメンバーのフォロー、飯島は先行して「すり鉢状の穴」の最奥を確認しに進んだ。
小竹は中間地点付近の3Dスキャンを行った後「すり鉢状の穴」へ降り、飯島とすれ違いで最奥まで3Dスキャンを行った。
「すり鉢状の穴」は股下ほどの深さまで白い泥で濁った水が溜まっており、底は泥で足がとられた。
奥へ行くと通路が狭まり水に浸かりながら四つん這いで進む。小さなダムのような地形で水がせき止められて水が途切れ、そのまま進むと見事な石筍と石柱が並んでいる。その先は数センチサイズのリムストーンプールが連なった地形がみられた。空間はさらに奥がありそうだが、狭くなっており人が入れるのはここまでだった。
石筍と石柱の場所は一段下に空間があり小さな池となっている。降りてみると、池は膝上くらいの深さであった。
「すり鉢状の穴」はほとんど人が入っておらず、壁面や二次生成物が非常に綺麗な白色のまま残っていた。
「Fホール」まで戻ったところで、「Fホール」内部も川崎と小竹で3Dスキャンを行った。Fホールは天井が高いため、iPhone搭載LiDARのレンジ外となる上部はフォトグラメトリで対応すべく、多数の写真も撮影した。
作業を終えたところで帰路につく。濡れたままの活動で体温・体力の消耗が大きかったので、急ぎつつ慎重に戻った。帰路の登竜門の滝でも更にずぶ濡れになり、皆震えながら14:00ごろ第三洞口より出洞した。
帰宅後、PCで3Dデータをつなぎ合わせたところ見事にルートが再現されていることを確認した。
ご参考:洞窟の3Dスキャンに関する知見は以下にまとめています。
https://github.com/CaveMapper/CaveMapper/
(小竹 記)
注意!
瀧谷洞は、一般の方の入洞が禁止されています。