豆焼沢・瀧谷洞新支洞探検

パイオニアケイビングクラブでは、瀧谷洞の新支洞探検を目的として2022年5月29日に活動を行いました。メンバーは、濱田、白石、林田の3名。

30年以上も前に発見された洞窟の未探検部分というのにはそれなりの理由があり、今回目指す新支洞は「危険度が高いため」という理由で未探検だったようです。そのため、ベテランのみでチームを構成し、人数も最小限に絞って活動しました。

前日夜に出会いの丘で宿泊し、翌朝瀧谷洞までのアプローチを開始。途中出現したカモシカに癒されつつ、2時間程でアプローチを終え、装備を確認して第二洞口から入洞します。

いつもより水量が多いようで、嶺鳴の間に響く水音も若干大きく聞こえました。入洞後は一目散に獣骨ホールへと向かい、SRTでテラスへと登ります。そう、今回のターゲットである新支洞は、獣骨ホールのテラスから洞口方面に見える穴です。(下の写真は以前の活動の際撮影したもの)

事前の下見で、ここは20m程の断崖絶壁でフリーでのトラバースは難しく、どうしても無理な体勢でボルトを打つ必要があることがわかっていました。そのため、今回は電動ドリルを持参。体力消耗低減と時間短縮を図ります。

リードはクライミングが得意な林田。 通常のSRT装備に加えて、ボルト打鍵用の装備である電動ドリル、ハンマー、ボルト、ビット、ハンガー、マイロン、レンチ、ヌンチャク、多くのカラビナ/スリング類を身につけます。また、待機組とのやりとりのため、デジタル簡易無線も装備します。
装備満載で身動きが取りづらいですが、この状態でトラバースにチャレンジ。

30mのセミスタティックロープを既存の支点でリギングし、STOP(ディッセンダー)を使いながら右の棚部分を慎重に匍匐前進します。ここで落ちると振り子のようになって支点側の壁に叩きつけられてしまうので気をつけます。
なるべく前進した後、右奥にある石柱に手を伸ばしてスリングをかけ、ロックカラビナを通します。ここにロープをかけて最初の中間支点としますが、石柱が細く、心もとないためまだ落ちるわけにはいきません。

さらに奥まで進むと、棚の幅が狭くなり、また傾斜がついてきてこのまま進むのが危険になってきました。そこで、少し手前の母岩が露出している床部分にボルトを打つことにします。電動ドリルで12mmの穴を開けますが、振動機能が優秀でいとも簡単に開きました。手動だと20分程度はかかってしまいますので、これは大きいアドバンテージです。

打ったボルトにハンガーをセットしてヌンチャクをかけ、ロープを通します。これで一安心。
しかしながら、今回使用しているのは伸長率の低いセミスタティックロープであり、またボルトとハンガーが15kNまでしか耐えられないケイビング専用品です。そのため、落下係数が高いような落ち方をしてしまうと、通常のクライミングで用いるものと比較すると抜けたり破断する可能性が高いため、可能な限り墜落は避けたいところです。

ここからは匍匐前進ではなく、クライミングの動きになります。棚の端の狭い部分につま先や膝を置きつつ、背中を天井に着いてチムニーで進みます。しかしながら、STOPに10.5mm径のロープを使っている都合でロープの流れが悪く、また装備満載での狭所作業には疲労が溜まりました。待機中の濱田に支点側からロープ裁きを手伝ってもらい、ようやく進むことができました。

これ以上進むのが困難なところまで到達すると、右奥に高さ5cm程の石筍があったので、なんとか手を伸ばしてスリングをかけてロックカラビナを通し、中間支点とします。これも心もとないため、極力静荷重で運用したいところです。

さて、ここからが一番の難所です。少し無理をして、難しい箇所の棚の縁を腕のみの力で突破してすぐ奥にトップアウトする選択肢もあります。しかしながら、万一落ちた際に石筍のスリングがすっぽ抜ける可能性があるため、周辺に2つ目のボルトを打つことにしました。ところが棚の上部は母岩が露出していなかったため、石筍にかけたスリングに静荷重でぶら下がり、棚の下の岩壁部分にボルトを打ちました。打ったボルトにハンガーをセットしてヌンチャクをかけ、ロープを通します。

ハンガーにぶら下がった状態で、次の手を考えます。少し奥に、岩壁とそこから剥がれた板状の岩の隙間がありますが、手が届きません。体を振り子のようにして板状の岩を掴みましたが、すぐに崩れてしまいました。その勢いで体勢も崩れ、上下逆さになってしまいます。

体勢を立て直して再挑戦です。ロープをもう少し降りて振り幅を大きくし、さらに奥にホールドがないか探ります。しかし見つかりませんでした。

今度はロープを登り返します。その後試行錯誤の結果、板状の岩に長めのスリングをかけることに成功しました。このスリングを掴めば体を少し左に寄せることができますが、ボルトを打つ作業には両手を使うため、その状態ではボルトを打つことができません。困りました。

疲労と緊張で喉が渇いたため、ここで少し休憩します。ペットボトルと予備のヘッドランプをロープで送ってもらい、補給します。

ぶら下がったまま10分ほど休憩しつつ、方法を考えます。最終的には、板状の岩にかけたスリングとハンガーとを連結して橋を作り、そこに立ち込むことで難所奥の棚にトップアウトする方法を選択しました。

この方法では、トップアウト中にSTOP操作を行うことができないため、事前にロープを弛ませた状態から動き始める必要があります。ロープ流れをよくするため、石筍にかけたスリングとカラビナを回収しつつ、弛ませたロープは濱田に持ってもらい、いよいよチャレンジです。

一番の難所ですが、ここは落下係数が大きいため、失敗できません。度重なる試行錯誤で既に握力は限界に近かったですが、持てる力のほぼ全てを使って、なんとかトップアウトに成功しました。

あとは奥まで匍匐前進で進み、大きめの岩にスリングをかけてセルフビレイをとり、ようやく無事にトラバースを成功させることができました。

トラバースした先の新支洞に何が待っていたかというと・・・

なんと地底湖がありました。幅2m、奥行き6m程度で流れはなく、周囲は石灰で真っ白で、とても神秘的な光景でした。
地底湖の先には穴が空いており、まだ空間が続いているようでした。

新発見に興奮しつつ、待機組がこちらに来るための方法を検討します。トラバースルートは難易度が高いため、使用したロープの余りを下に垂らし、一度獣骨ホールを降りてからこちらのロープを登り返すことにしました。

濱田、白石が獣骨ホールを降りている間に、トラバース先でSRT用の支点を構築します。セルフビレイにも使った岩にロープを巻きつけ、さらにその後方の岩にスリングをかけてバックアップとします。無線機で準備完了を伝えると、濱田が素早く登ってきました。

白石が到着するまでに、地底湖の奥の空間を覗き込みます。
奥の空間を覗くためには水面ぎりぎりまで降りる必要がありましたが、水面までの傾斜はチャートでドロドロだったため、スリングを繋げて登り返せるようにしておきます。

濱田が覗き込んだところまだ続いているようだがうまく見れないとのことで、林田がスリングにセルフビレイをとりながら上下逆さになって確認します。
奥の空間は少し左に向かって伸びており、その先を目視することはできませんでした。

白石が到着したので、スリングとカラビナで水深を測ってもらいます。透明度が高いため目視ではよくわかりませんでしたが、水深は一番手前で60cmほどあることがわかりました。

時間的にも体力的にも、この奥の探検は次回以降に持ち越しです。水深は奥に行くほど少し深くなっているようでしたので、多少足が沈むことも考慮すると、ウェーダーを履いても奥まで行くのは難しいかもしれません。奥の穴も小さく、ボートを通すのは不可能なため、もしかしたら泳いでいく選択肢も視野に入れる必要があります。

探検を切り上げて、第二洞口から出洞。実に5時間を超える洞内活動となりました。

今回は新支洞へのトラバース成功、地底湖の発見など、満足度のとても高い探検となりました。発見した地底湖の名称を考えつつ、帰路につきました。

(林田 記)