倉沢洞窟群練習ケイビング/『茅尻沢』第2次洞窟探索

1.活動日程

1999年12月19日(日)

2.参加者(敬称略)

芦田、大喜多、小山、星野、山西、内山の計6名。

3.活動

この日の目的は、東京都西多摩郡奥多摩町倉沢周辺の洞窟群の探勝と12月4日の探索で見つかった塩地谷茅尻沢の石灰岩体での洞窟探索だった。
倉沢鍾乳洞前に8時に集合し、8時50分から茅尻沢の石灰岩体を目指した。奥多摩近辺では前日に雪が降っていたので、この日の天候は晴れていたが、山の上は白く染まっていた。茅尻沢石灰岩に着くと、やはり薄く雪が積もっている。まず、前回発見した倉沢の猿穴を見学してから、本格的に探索を開始した。
今回は6人と人数が多いので、トランシーバーを使い、お互いの位置を把握するようにしていた(今回は人数分のトランシーバーがそろっていたので洞窟探索に非常に有効だったと思う)。沢沿いから山側まで分かれて探索し、そのまま沢の上流に移動することにした。僕は山側を探索したのでそのことを記して活動報告としたいと思う。
前回来た時は山上には石灰岩は続いていないと思っていたが、それは間違いだった。実際は溶け残りの石灰岩が多く顔を覗かせていて、土の下にも石灰岩が続いていることはあきらかだった。それらの溶け残り石灰岩は下方向に溶食が進んでいたので、竪穴がないかひとつひとつチェックしたが、多くは土で完全に埋まっていた。1箇所、割れ目が下に続いていたものがあったが、幅が狭く、とても人が入れそうもなかった。
少し上流に移動すると目の前に石灰岩の露岩が見えた。取り付くのは積雪もあり、怖かったので、それを避けて露岩の上方を探索することにした。ここも溶け残りが点在していたので、さっきと同じように調べる。まず5m程離れた所に小さな溶け残りがあったので、調べようとしたが、とても小さなものだったのでどうしようか迷った。しかし、すべて調べないと意味がないので一応見てみることにした。まず、露岩下部に積もっている枝などを掃除する。すると、10cmx30cmぐらいの穴のような空間が出てきた。顔を近づけてみると、わずかに風を感じる。しかも随分と暖かい。少しディギングしてみることにした。
その穴自体はただのガレの隙間にも見え、穴はあるかも知れないけど、人が入れるような穴だとはあまり思えなかった。どうしようかなと思いつつ、ふと顔を上げると、露岩上部にも10cmx10cmぐらいの穴があった。顔を近づけると、やはり暖かい風が出ている。勢いは下の穴より強く「風」と呼べるレベルのものだった。今度はこっちの穴をディギングすることにした。周りの岩や枝などを掃除すると、すぐに覗き込めるぐらいに穴が広がった。
中を見てみると溶食跡が見える。「これは洞窟だ!」と思ったので、ディギングする手を早めた。穴は下方に伸びていて、内部は左半分が土で埋まっていた。洞口付近の岩はボロボロでバールで簡単に剥がすことができたので、すぐに上半身が入れるぐらいまで広がった。しかし、厚さ5cmぐらいの薄い岩盤が邪魔をして、奥を見ることができなかった。ディギング中、穴の中に石や土などが入らないよう気をつけていたが、どうしても落としてしまうことがあった。落ちて行く時の音は随分と長い間鳴り響いている。だんだん興奮の度合いが高まってくる(あとで石が落ちる時間を測ると17秒もあった)。どうしても奥の形状を自分の目で確認したかった。詰まっている岩盤の所で穴は狭くなっていたが、それは部分的なもので、その下はもっと大きい溶食穴が下に向かって広がっているはず。根拠はないが、この時はそう思った。
山西さんからトランシーバーが鳴った。現在の状況を尋ねられたので、洞窟らしきものを見つけたこと、このまま作業を続けたいことを伝えた。結果、他のメンバーは茅尻沢の抜け穴を見学した後、ここに集まることになった。付近を簡単に調査している間に、全員が集まった。人数が集まってからのディギングは早かった。穴はどんどん広がっていき、邪魔をしていた岩盤も外に出すことができた。すると、内部の形状は直径15cmぐらいの穴が下方に伸びているだけで、とても人が入れるものではないことがわかった。それを知り、かなり落胆した。
今度は下の穴(初めに見つけた方の穴)をディギングすることになった。個人的には、この穴は母岩にできたただの溝で、流れ込んだ土が堆積しているだけで、流れている風は上の穴のものが岩の隙間から吹き出しているだけだろうと思っていた。しかし、芦田さんと山西さんはこの下に入洞可能な洞口が見つかるかもしれないと言う。ためしに堆積している土の中に体を沈めてみると、かなり深く沈んでいく。土はやわらかく暖かい。体を沈めた穴からは湯気が上がってくるのが見えた。本当に竪穴があるかもしれない!
この場所は後日、本格的にディギングすることになった。下に広がる露岩も相当怪しいので、次回はここも探索したい。また、露岩の上に点在する溶け残りもすべて調査したわけではないのでこれも次回の課題としたい。
時計は14:00を過ぎていたと思う。尾根を越えて、小白竜窟を目指すことになった。探索をしながら行ったので、大分時間がかかった。2時間程かかって、洞口前に到着。小白竜窟は割れ目系の穴だ。第一洞から第四洞まであるが、今回は第一洞のみ入洞した。
まだあまり人が入っていないらしく洞壁は白く、また痛い。入洞するとすぐに上下に分かれる。上は大喜多さんが入っていったので下に進んだ。チムニーで降りると進行方向は狭くなっている(A地点)。人が入った形跡があるので少なくても少しだけは進めそうだったが、左にも支洞があったので、まずそちらに進んだ。こちらもかなり狭い。5mぐらい進んだ所で崩落した岩に邪魔をされて進めなくなった。その2m先は左に折れていて、確認することができない。邪魔をしている崩落石はバールで割ることができそうなので次回はもう少し先に進みたい。
再びA地点に戻り、奥に続く狭洞に入ってみる。かなり狭いので、ぜんぜん進むことはできなかった。時間がないので、ここで出洞。時計は17:00ぐらいだったと思う。あたりは薄暗くなっていた。
下山して倉沢の車止めで着替えを済ませ、18:15頃、その場で解散した。

4.結果と次回の課題

・茅尻沢近辺の石灰岩の範囲が把握できた(茅尻沢の抜け穴より少し先で石灰岩は終わっていたらしい)。

・茅尻沢の抜け穴の上部に新たな洞口を発見した(今回は積雪がありアタックしていない)。

・茅尻沢で3m程の新洞を発見した。洞口は直角三角形のような形状で内部は洞窟珊瑚が見られる。名称は「茅尻沢の三角穴」とした。

・茅尻沢で竪穴らしきものを発見した。入洞可能な洞口があるかないかは今後のディギングによる。

・小白竜窟の探検・ディギング。上下に分かれる個所の上側の奥に過去よりPCCでディギングしている場所があるらしい。この作業をまた継続したい。
(内山 記)