1997年11月16日(日)、埼玉県秩父郡荒川村(現秩父市)谷津川で新洞探索を行う。参加者はPCCより芦田、大津の2名と高瀬氏の計3名。
谷津川本流及び支流の地獄谷の標高700m付近に石灰岩地帯があることが地質図により判明していた。地形図を見ると両谷とも標高700m付近に岩壁があることが確認できる。今回、この岩壁が石灰岩壁ではないかという推測にもとづいて、探索を行うことにした。
谷津川沿いには旧登山道(現在は廃道)があり、それを利用して、地獄谷出会いまで行き、地獄谷は沢登りで石灰岩地帯に向かう。ところが、現地に到着してみると地形図上の岩壁は石灰岩壁ではなかった。河床面には石灰岩の転石が点在しいるが、付近に大規模な露岩は見あたらない。唯一、沢沿いで長さ約20m、厚さ3mほどの石灰岩の壁を確認できた。
そして、その石灰岩壁で間口約2m、高さ50センチほど洞口を発見。さっそく入洞するが、入口から2mほどで天井が低くなり、進めなくなる。シャベルで洞床を掘り下げると、約2m進めたが、今度は狭洞で進入不能になる。タガネ、ハンマーで洞壁から出っぱっている岩を削ると、さらに3m進入できたが、再び超狭洞となった。ディギングすることが困難になったため、これ以上の進入を断念した。
測線延長約7mの小規模な洞穴であるが、洞床には溶食形態があり、また、天井には洞窟珊瑚があったので、石灰洞と認定し、『地獄谷の穴』と命名した。
この後、尾根を越えて谷津川本流の石灰岩地帯に向かう。途中の岩尾根で長さ30mほど、深さ平均約3mのクラックを発見する。巨大な転石ではなく母岩が割れたものである。残念ながら石灰岩ではないため、石灰洞はなかった。一応、『割れ岩尾根』と命名する。谷津川本流にも石灰岩の転石は点在するが、やはり露岩は確認できなかった。結局、七ツ滝まで沢をつめたが、なんの成果もあげられず、撤収することにした。
今回、成果をあまりあげられなかったのは、石灰岩体が沢の河床面よりもまだ下の方に分布していたためではないかと思われる。山の上の方にはまったく石灰岩が存在せず、河床面に埋没した状態で石灰岩が点在していた。
(芦田 記)