ケイビングを行うために必要な装備の内容や実際に装備を入手する方法について、詳しく解説します。
1.ケイビングの装備
どのようなアウトドアスポーツでも、それを行うために必要な装備があります。もちろん、ケイビングとて例外ではありません。洞穴内の移動は岩登りや沢登りに例えることができます。ですから、必要な装備も岩登りや沢登りで使うものが数多くあります。そして、地底という特殊なフィールドで活動する分、それらのアウトドアスポーツよりもいくぶん余計な個人装備と団体装備が必要になります。
これらの装備をすべてそろえるには、登山用品店やアウトドアショップだけでなく、ホームセンターや作業洋品店なども回らなければなりません。一見、アウトドアスポーツとはぜんぜん関係なさそうなものが意外に役立つ場合があります。裏技ならぬ裏装備です。そういったものも紹介したいと思います。
2.照明
まず、ぜったいになくてはならない装備の筆頭は照明です。洞穴内の暗さは、いわゆる夜の暗さとは違い、まったく何も見えない本当の闇です。洞穴内で照明を消してしまえば、自分の手を目の前にかざしてみてもまったく見えません。ということは、この照明が壊れたり無くなったりしたら致命的な事態に陥るということは理解できると思います。ですから、必ず複数の照明を持つようにします。
もっともポピュラーな照明はヘルメットに取り付ける電池式の電灯キャップライトです。懐中電灯は補助的に使用する分には問題ありませんが、メインで使用するには不向きです。なぜなら、ケイビングは手が自由に使えないと危険な場合があるからです。なお、キャップライトはアウトドアショップ、登山用品店、釣り具店で購入することができます。
キャップライトはメインとサブの電球が2つある防水性のものを使ってください。洞穴に入洞した直後は明るいメインライトを使用し、目が洞内の暗さに慣れてきたら、光量が小さいサブライトに切り替え、電池の消耗を抑えます。そして、大きい地底空間に出たら、メインライトに切り替えて、遠くまで照らせるようにします。また、どちらか一方の電球が切れた場合も、すぐにもう一方に切り替えることができます。
防水性についても十分に考慮します。洞穴には水流部や溜まり水、滴下水など、キャップライトが水に濡れるシーンが数多くあります。とくに石灰洞では「水潜り」と呼ばれる半潜水状態の狭洞突破などもよく行われます。ライトに防水性がないと、故障の原因になります。
可能ならば、キャップライトは同じ仕様のものを3つ用意して、2つはヘルメットに付けておきます。電灯の場合、替え電球、替え電池を準備しなければなりませんが、同じ仕様のキャップライトなら、用意しておく替え電球、替え電池が共用できます。また、故障した2つのキャップライトから、壊れていない部品を組み合わせることで、正常な1つのキャップライトを作ることも可能です。そして、3つめはサブザックにしまっておき、ヘルメットに付けているキャップライトのどちらかが故障したときに交換します。
キャップライトの電池ボックスは、ライトと一体型のものやライトと電池ボックスを延長コードによってつなぐセパレーツ型があります。さらにセパレーツ型には腰のベルトなどに大型の電池ボックスを付けるタイプとヘルメットの後ろに小型の電池ボックスを付けるタイプの2種類があります。いずれも一長一短があり、どれを選ぶかは使用する人のポリシーと入洞する洞穴によって変わってきます。
一体型はライトと電池ボックスが一緒なので軽い単三電池を少数本しか使えません。ですから、長時間、明るい光源を維持するのは困難です。また、軽い単三電池とはいえ、その分、重たくなり、ヘルメットが頭にフィットしていないと、前にたれさがってしまいます。ただ、じゃまになる延長コードは一切ないので超狭洞を突破するときには威力を発揮します。
セパレーツ型で電池ボックスを腰のベルトなどに付けるタイプは、ライトが軽くなるうえ、単一電池6本を使う強力な電源のものもあり、長時間使用することができます。ただし、狭洞部での行動が延長コードと大きい電池ボックスによって大きく妨げられます。また、非常にかさばるため、同じものを複数個そろえるのは困難です。
電池ボックスがヘルメットの後ろにあるセパレーツタイプ セパレーツ型で電池ボックスをヘルメットの後ろに付けるタイプは前後の重さのバランスがとれているため、ヘルメットが前傾することはありません。延長コードもキャップライトのベルト沿いに走っているので、腰のベルトに付けるタイプほどじゃまではありません。このタイプと後述する超強力ハンドライトとの組み合わせがベストチョイスかもしれません。
電池式の電灯キャップライト以外にケイビングでよく使われる照明として、カーバイド式キャップライトがあります。燃料となるカーバイドの値段が安く、また、非常に明るい光源を長時間維持できるので、ケイビングにはもってこい照明です。ただ、ライト本体も燃料のカーバイドも入手するのが、電灯キャップライトや電池などに較べて若干手間がかかるのと、カーバイドから発生するアセチレンガスを燃焼するときに臭いが出るのが難点です。
最近、使われだしたものに電池式のLEDキャップライトがあります。これは電灯キャップライトと同じ電池を使って何倍も長持ちします。LEDの数にもよりますが、それなりに明るく、十分ケイビングの照明として役立ちます。ただし、あまり遠くを照らすことはできないので巨大な洞穴では不向きかもしれません。ただ、電球が切れる心配がなく、電池の消耗を気にしなくていいので、緊急時の予備ライトとしてはメインになる可能性があります。まだ、あまり出回っていませんが、東急ハンズで購入することができます。
キャップライト以外に補助的な照明として、強力な光源を持つ懐中電灯があると便利です。天井付近などの高い場所に支洞がないかどうか探すときにキャップライトでは今ひとつ見にくい場合があります。とはいえ、大型の懐中電灯を持って歩くのは荷物になってじゃまです。そこで掌に納まる小型の超強力ハンドライトの登場です。ライトをつけっぱなしにすると、10分前後しか保ちませんが、ちょっとしたところをのぞくには十分です。照明に限らず、ケイビングの装備は小型軽量に越したことはありません。
あと非常用にローソクとライターをビニール袋に入れて持っておきましょう。これらは百円ショップで購入できるもので十分です。
3.ヘルメット
次に重要な装備はヘルメットです。洞穴は人工のトンネルと違い、自然にできた岩窟ですから、落石の危険は常にあります。また、洞内には天井が急に低くなっている場所がたくさんあり、気をつけていても、ついうっかり頭を天井にぶつけてしまいます。そのような状況で動き回るわけですから、ヘルメットは照明に劣らず、ケイビングの必需品です。
体験ケイビングとかで1度くらいケイビングをやってみるだけというのなら、ホームセンターなどで購入できる工事用ヘルメット、いわゆるドカヘルでもかまいませんが、本格的にケイビングをやるのなら、岩登り用のヘルメットを登山用品店で購入すべきです。値段がドカヘルの千円前後に較べて8千円前後しますが、安全を買うと思えば、8倍の値段でも高くはありません。
ドカヘルは頭にフィットせず、どうしてもグラグラしてしまいます。とくにキャップライトを付けると、その重みで前傾してしまい、視界をふさぎがちとなり、行動の妨げになります。また、キャップライトを固定するためにガムテープなども必要です。その強度も岩登り用ヘルメットとは較べるべくもありません。
一方、岩登り用ヘルメットはさすがに頭にピッタリとフィットするものが選べます。キャップライトを付けてもグラグラしません。また、ものによってはキャップライトを固定するストッパーが付いているものもあり、使い勝手はドカヘルよりはずっとよいです。そして、どうせなら水潜りに備えて、側面に小さめの穴がいくつかあいているヘルメットがベストです。
ヘルメットをかぶるうえで気をつけたいことは、天井の尖った岩から頭を守るヘルメットをしているという安心感からか注意力が低下して、逆に岩の出っ張りにヘルメットごと頭をぶつける回数が増えることです。ヘルメットをかぶると、実際の自分の背よりも高くなることを実感していないせいもあります。軽くぶつける程度なら、大したことはありませんが、勢いよくぶつけると、ヘルメットをかぶっていても頭に大きな衝撃を受けることもあります。
また、天井に頭をぶつけるということは、自分だけが被害を受けるというわけではなく、天井にある二次生成物をも破壊してしまうという可能性があることを留意しなければなりません。ということで、ヘルメットをかぶっていても、洞穴内の天井には十分に注意しましょう。
4.探検服/膝パッド
探検服も比較的重要な装備です。しかし、探検服といっても、それほど大げさに考える必要はありません。洞穴内の壁や床には尖った岩がいっぱい突き出ています。これらの凶器から身体を守るには、尖った岩に擦れても破けないじょうぶな生地で、狭い通路を抜けても捲れ上がったり、ずり下がったりしない服が必要になります。これに相当するものが厚手のつなぎ作業服です。
つなぎ作業服はホームセンターや作業着店で簡単に購入できます。値段もピンキリですが、あまり安物を買うと、すぐに破けて、かえって出費がかさむことになります。ある程度の厚みがある、じょうぶな生地のものを選ぶべきです。そして、可能ならポケットなど岩に引っかかりそうなところはすべて縫いとめておくと、狭洞を抜けるときに楽ですし、つなぎ作業服も長持ちします。
洞穴の気温は1年を通じて、その洞穴がある地域の年平均気温です。日本なら北海道の5度から沖縄の20度くらいまでですが、沖縄の20度でさえ、つなぎ作業服だけでは寒い環境と言わざるを得ません。まして、本州の洞穴は15度以下ですから、つなぎ作業服の下に防寒用のインナーウェアを着なくてはなりません。インナーウェアは厚手のフリースから薄手のジャージまでいろいろありますが、これは個人の体感と入洞する洞穴によって、何を着るか判断してください。
洞穴によっては、ケイビング中に水流などで、けっこう濡れるところもあります。洞内の気温が低めですから、少し濡れただけでも思った以上に身体が冷えます。あらかじめ、気温が低い洞穴内で濡れるとわかっていたら、つなぎ作業服はインナーウェアの間にレインウェアを着込むという選択もあります。ただ、レインウェアは登山用のゴアテックスのものでないと、自分の汗で、かえって濡れることになるので注意が必要です。
最近は、本格的にケイビングをやる人の間でケイビング専門の探検服──ケイビングスーツを使う人が増えてきています。もちろん、日本で生産されたものではありません。フランスやイギリスのケイビングギアメーカーが生産したものです。基本的には通信販売による取り寄せになりますが、近年、日本国内の一部アウトドアショップで購入可能になってきました。
ケイビングスーツは洞穴探検をする人のために作られただけあって、その使い勝手はつなぎ作業服の比ではありません。防水性の優れたじょうぶな生地に、余分な引っかかりをなくした滑らかな表面、さらに機能的にデザインされた上下のつなぎ服。このケイビングスーツさえあれば、濡れる洞穴でもレインウェアを着込み必要はありません。気温の低い洞穴でも厚手のインナーウェアを着る必要はありません。じつに快適にケイビングを楽しむことができます。惜しむらくは、日本国内での入手のしにくさと、その値段の高さです。ただ、高いと言っても、その使い勝手を考えれば、本格的にケイビングをやり続ける人なら、十分にもとはとれます。
さらにつなぎ作業服やケイビングスーツの下に装着する膝パッドや肘パッドなども準備しておくと、快適なケイビングが行えます。いささか贅沢な装備ですが、これらを付けていると、狭洞で膝や肘を使う場面でもまったく痛みを感じません。ですから、ふつうなら痛くて力を入れられないような場所でも手足に力を入れることができます。そして、肘や膝の青あざ、打ち身などから縁を切ることができます。この隠れた秘密装備は1度でも使うと、手放すことができなくなります。
5.ベルト
ケイビングでは、ありとあらゆる態勢に身体がスムーズに動かなければなりません。そのために、つなぎ作業服を着るにしろ、ケイビングスーツを着るにしろ、ベルトはぜったいに必要です。上下がつながっている服は水に濡れると、下半身が重たくなり、全体にずり下がって上半身が突っ張った状態になります。それでは上半身の動きが制限されてしまいます。そのづり下がりを防止するためにベルトをしめるわけです。
ベルトは登山用品店で売っているスワミベルトがベストです。このベルトなら竪穴などでジッヘルする場合やワイヤーバシゴの上り下りの途中で休息する場合でも自分を確保することができます。また、緊急時にはレスキュー用のザイルをつなぐことも可能です。
6.軍手ゴム/作業手袋/腕カバー
洞穴内の岩場を素手で触っていると、尖った岩で思わぬ怪我をすることがあります。それを防ぐために軍手をします。また、手が泥などで汚れるのを防ぐ役目もあります。ただし、軍手は水に濡れると、その防護力が大幅に低下しますし、汚れをほとんど防ぐことができなくなります。
そこで軍手の上からゴム作業手袋などをすると、その心配がなくなります。いつでもきれいな手でカメラを使ったり、食事をとったりできます。ただし、ワイヤーバシゴを登ったり、ザイルなどを扱うときはゴム作業手袋をとらないと、指に力が入らないため、危険です。なお、ゴム作業手袋は使っているうちに縮むので大きめのサイズを購入します。
ついでに腕カバーも準備すると完璧です。事務用のものでも農作業用のものでも何でもかまいません。軍手と探検服の袖口の間──手首を怪我から守り、また、汚れるのを防ぎます。作業用ゴム手袋の上にかぶせるようにつけると、手袋の中に泥や砂、水などが入るのも防げます。同時に手首にはめている腕時計も保護されるので、傷がつきにくくなります。文字盤のガラス面も泥で汚れないので、時間を簡単に確認できます。
7.探検靴/スパッツ
洞穴で履く靴についてはいろいろな意見がありますが、最もポピュラーなものは登山靴です。ただし、靴の裏側に金属の金具が付いたものはやめてください。岩場などで滑りやすくなりますし、フローストーンなど洞床にできる二次生成物を傷つけてしまいます。軽登山靴やトレッキングシューズなどがよいと思いますが、きちんとメンテナンスしないと、水や泥を浴びた皮の部分が堅くなってしまい、歩きにくくなります。
体験ケイビングぐらいなら運動靴でもかまいませんが、強度的には弱いので、すぐに使えなくなります。地下足袋は滑りにくくてよいのですが、ガレ場などで石が足に当たると、怪我をするおそれがあります。
そして、最近の流行はゴム長靴です。とくにケイビング専用のゴム長靴は履き心地、機能性とも抜群です。ただし、これもケイビングスーツ同様、日本製ではないので、通販で購入しなければなりません。ゴム長靴のメリットは、それほど深くない水流部なら、濡れることを気にせずに歩けることです。また、ゴム長靴の中に水が入ってもケイビング専用のものなら、脱いで水を流し出せば、すぐに快適な状態に戻ります。
なお、登山靴にしろゴム長靴にしろ、靴下は登山用品店で売っている厚手のものを使います。したがって、靴のサイズはふだん履いているものよりも若干大きいサイズを選ばなければなりませんが、あまり大きすぎると、ゴム長靴の場合、歩きづらくなります。
ついでに冬山登山用のスパッツを着用すると、靴の中に小さい砂利や水などが入りにくくなり、非常に快適です。ただし、もともとが雪の浸入を防ぐものですから、それほど丈夫ではありません。ですから、ケイビングで使用する場合には軍手同様、消耗品と覚悟しなければなりません。しかし、値段が軍手に比して100倍以上するので、非常に贅沢な装備であることは否めません。
8.緊急装備
ケイビングをするうえで、照明以外にも必ず携行しなければならない装備が緊急時に備えたものです。ちょっとした軽い怪我を治療するための簡単な救急セット、万が一の遭難時、防寒のために身体を被うサバイバルシート、遭難時にレスキュー隊が到着するまで体力を保たせる非常食、緊急時に声が届かない場合、長音・短音を組み合わせて合図を送る笛、電灯の電池を節約するためのローソクやライターなどです。
9.サブザック
100m未満の小穴に入洞するのなら、あまり必要性は感じられませんが、何時間も入洞するような洞穴の場合、空身というわけにはいきません。最低限、予備の照明やスペア電池、緊急時に備えた装備類を持っていなくてはなりません。また、滞洞時間が長くなる場合には行動食や水筒なども必要になります。これらを洞内で持ち運ぶためにサブザックがなくてはなりません。
探検の目的に応じて装備が増える場合もあります。竪穴探検を行うのなら、個人用の装備から団体用の装備まで持ち運ばなくてはなりません。測量を行うのなら、コンパスやメジャーなどの装備を持ち運ばなくてはなりません。洞内写真が必要ならカメラやフラッシュ・バルブなどを持ち運ばなくてはなりません。このような場合は、やや大きめのザックでなくては役に立ちません。
ケイビング専用サブザック サブザックは洞穴内に持ち込み、狭洞で引きずったり、泥の洞床に転がしたりと、苛酷な条件で使用されます。ディスカウントショップなどで売られている安物のディバッグではすぐに破損してしまいます。ちょっともったいないですが、登山用品で売られている登山用のディバッグが長持ちします。
そして、やはり、ケイビング専用のサブザックが発売されています。防水された丈夫な生地で、表面は滑らかで引っかかるようなものは一切ありません。その形状も狭洞などで通しやすいよう、やや細長に作られています。登山用のディバッグを購入するのなら、ケイビング専用サブザックを購入すべきですが、外国産のため、国内ではケイビングスーツなどを取り扱っている一部のアウトドアショップでしか売っていません。
10.ワイヤーバシゴ/ザイル/カラビナ
竪穴の上り下りに一番便利なのはハシゴです。しかし、実用性のある長いハシゴを洞穴内に持ち込むことは、ほとんど不可能です。そこでワイヤーにステップを取り付けたワイヤーバシゴを持ち込むことになります。ワイヤーバシゴは携帯性に優れており、きれいに巻けば、ザックに入れることも可能です。さらに10m単位のワイヤーバシゴを2連、3連と繋いでいけば、50mくらいまでは延長可能です。
また、ワイヤーバシゴを上り下りするときには必ず昇降者をザイルで確保しなければなりません。ですから、ワイヤーバシゴとザイルはセットで使うことになります。最近では、1本のザイルだけを使用して、竪穴を昇降する技術──SRT(シングルロープテクニック)という技術が普及しているため、ケイビングロープと呼ばれる特殊なザイルも使われるようになってきています。
ロッククライミングで使われるアブミも携帯性があるので、用意しておくと便利です。フリークライムで上り下りするには困難だが、ワイヤーバシゴを出すほどの高さではないというときなどはアブミを2連くらいつないで、昇降することができます。
なお、ワイヤーバシゴ、ザイル、アブミ、それらを繋いだり、固定したりするのにカラビナが必要です。安全のため、環付きのものを使用します。また、洞穴内で使用するので錆びにくくて軽量のものが最適です。
11.ハンマー/ジャンピングセット/ボルト
ワイヤーバシゴやザイルの固定点として、安定した岩や溶食穴のようなナチュラルアンカーがあれば問題ありませんが、そのようなものがないときはボルトを岩壁に打ち込んで人工的に作らなくてはなりません。そのようなときにボルトを打ち込む穴を岩壁に開ける道具がジャンピングセットとハンマーです。
12.トランシーバー
トランシーバーは曲がりくねった洞穴内では電波が洞壁に反射して、ほとんど役に立ちません。基本的には野外で洞窟探索などに利用するものです。しかし、洞穴内で必要かつ利用可能な場所が1か所あります。それは竪穴です。
ただでさえ、竪穴での活動は危険を伴います。上にいる人間と下にいる人間との意志疎通がうまくいかないと事故のもとです。しかし、深い竪穴の場合、上下で怒鳴りあっても声が洞壁に反響して、なかなか相手に通じません。近くに水流などがある場合は、もう完全にお手上げ状態です。
そこでトランシーバーの登場です。レジャー用の防滴タイプなら、洞穴内で使用しても故障することはありませんが、一応、万が一の故障に備えて、1組プラス予備機1台で臨みましょう。
13.カメラ/フラッシュバルブ
洞穴内で使用するカメラは何より丈夫さが求められます。多機能で高機能なものよりも操作性があって軽量なものを選ぶべきです。一番ベストなのは防水・防泥で、いざというときは水洗い可能なカメラです。
また、巨大なホールなどでの撮影はフラッシュバルブを用意します。カメラに内蔵されたフラッシュだけでは明かりが足らず、撮影に失敗してしまいます。可能ならば、複数のフラッシュバブルを用意しましょう。
14.測量機材
洞穴の測量機材として、ポケットコンパス、クリノコンパス、三脚、メジャー、画板、定規、分度器、筆記用具などがあります。メジャーは測量する洞穴の規模に応じて、50mのものや20mのものを選択します。また、定規と分度器は一体型のものが便利です。さらに定規や分度器、筆記用具など落としたときに岩の隙間に入って、なくなりやすいものは必ず予備を用意しておきます。
15.ゴムボート
洞穴内には人の背が立たないような深い地底湖や地下川があります。このような場所を進むためにはボートが必要ですが、もちろん、ふつうのボートは持ち込めません。もし、必要ならば、折りたたみ式のゴムボートを使うことになります。ただし、ゴムボートを使うときは、洞壁などにある鋭い岩によってパンクするリスクを認識し、そのための対策を講じておきましょう。
注意!
このページを読んで、ケイビングをやってみようと思われた方は、自分の責任において行ってください。このページに記された内容を実践し、万が一、遭難事故などを起こされても、当方は一切責任を負いません。