精進湖口試練の穴測量

2020年11月15日(日)PCCでは山梨県南都留郡鳴沢村付近にある新溶岩洞窟「精進湖口 試練の穴」にて測量を行った。
この洞窟は2007年7月1日にNPO法人火山洞窟学会 田近雅洋氏、宮下弘文氏、宮崎哲氏らにより洞口は発見されていたが内部の調査は行われていなかった洞窟である。2020年4月5日のPCCの活動により内部の総延長が200m近くある事がわかり、この度正式に測量を行う運びとなった。
今回の測量では、従来の測量計を使用した方法に加えて、新しいスマートフォン(iPhone12 PRO)のLiDAR技術を利用した洞内の3Dマッピングに挑戦。洞窟の新しい測量方法の有用性についても検証を行った。
メンバーは林田、濱田、臼倉、渡邉、今野、澤木の6名。

今回は集合時間の関係上、林田、今野、澤木の3名が10時半に入洞し先に測量をスタート。濱田、臼倉、渡邉の3名は遅れて入洞し、12時頃内部で合流した。
今回行った従来の測量方法とは、レーザー測距計を使い、各ポイントまでの距離、方位角、傾斜角、左右の洞幅、ポイント高、天井高、の各データをこまめにノートに記録しながら、洞窟の内部の特徴を捉えて行く方法である。
内部で2チームが合流するまでは、今野がレーザーで計測、澤木がポインター、林田がデータを記録しつつ内部の特徴の絵をかきながら進んで行く。

最初は、狭い洞内や慣れない測量に戸惑いながらであったが、徐々にポイントの掴み方や段取りもよくなり、良いチームワークになっていく。ただ、洞内は崩落箇所が多く、複雑な形をしているため、特徴を捉える事がかなり難しかった。
洞内で合流後(余談:スムーズに時間通り合流できた事に驚き!)行動食をとりつつ改めてチーム編成をし直し、活動再開。
いつもの洞窟探検とも違い、調査隊感があって、またひと味違うわくわく感。

A班 レーザー測距計を使った測量チーム(濱田:レーダー計測、今野:ポインター、渡邉:記録・スケッチ、臼倉:写真記録)
B班 iPhone12 PRO搭載のLiDARを使った3Dマッピング測量チーム(林田:3Dマッピング、澤木:写真記録)

A班は合流地点より先に測量を進めて行く。

一方、B班は一度入り口に戻り、3Dマッピングによる測量を行うため、改めてLiDARよるスキャンを開始した。

今回使用したのは林田個人所有のiPhone12 PRO搭載のLiDARで、アプリは「3d Scanner App」を利用。動画を撮影するようにスキャンした地形情報に、撮影したテクスチャをリアルタイムに適用する事が出来る優れもの。
ただしアプリのメモリ管理の都合上か、一括で洞内全てを記録できる訳ではなく、洞内を20以上のパーツに分割してスキャンし、自宅に持ち帰ってから3Dデータを扱えるソフトウェアを用い、手作業でパズルの様にして組み合わせる必要があった。
また、人間や荷物等が映り込んでしまうと、それも地形の一部と認識されてしまう為、その点には注意が必要であるが、そういった点を除けばマッピング作業は一人で行う事が出来、iPhoneが入る隙間さえあれば地形を認識することが出来た。

測量時間も相当短縮する事が出来たので、A班が最奥を測量しているところに追いつく形で、B班も再奥へと辿り着く事が出来た。ほぼ3分の1の時間しかかからなかったため、何とも驚きの早さである。

最奥には以前より動物の糞らしきものがあったが、今回はより増えていた。そのため最奥から近い位置に別の洞口が存在する可能性がある。
また、3Dマッピングにより、精密な全体図を把握する事が出来たため、火山洞としての階層が違う可能性がある部分がはっきりとわかり、また新たな支洞を見つける際の手がかりになる。この試練の穴は、まだまだ今後の調査がたのしみな洞窟である。

今回の活動では、「新洞窟の測量」という中々出来る事ではない貴重な経験をする事が出来た。そして2つの測量方法を実践する事により、従来の洞窟の調査は相当な時間や労力をかけて行われて来たものだという事を実体験する事ができ、また、個人が手に入れる事が出来る身近なもの、現代の技術を利用してより早く、より精密に洞窟の調査が出来る事も実証でき、本当に有意義な調査ができた。

今後のケイビングジャーナルでの発表も待ち遠しい!

(澤木 記)