1999年11月6日(土)、熊本県上益城郡御船町の風神鍾乳洞で練習ケイビングを行った。九州へ行く機会があったので、風神鍾乳洞の主と言われるほどの、東さんにお願いして案内してもらったものである。参加者はPCCから小堀、ワイルドバッツから東さん、吉村さん、上田さんの3名。東さん、吉村さんとは富士山でのケイビング大会でご一緒したことがある。
当日は、大分からの一番バスで、熊本市郊外の東町中央下車。道路渋滞のため25分ほど遅れたので、すでに東さん一行は到着し、待っていてくれた。すぐ東さんの車に乗って出発。ワイルドバッツの面々も熟年で当方の年齢もあまり気にならない。
10時20分出発、天候は薄曇り。
しばらく平地を走ったあと、山の中の屈曲した道を1時間少々走って、風神鍾乳洞近くの駐車場に着いた。そんなに高い山ではないが、えらく山奥に来た感じ。しかし、東日本に較べて昔から人が住んでいた地域だけに、どんな小さな谷間にも人家があった。
駐車場は4~5台は駐車できそうだった。そこで着替えと昼食。各層別に色分けした風神鍾乳洞の測量図を用意していてくれた。それをもとに今日の行動予定の説明が東さんからあった。なにしろ泥だらけになる穴だそうだ。層別に色分けすると、複雑な風神鍾乳洞の構造がなんとなく分かる。ありがたい。林道を10分ほど戻って、風神鍾乳洞への標識のある所で左側の水越川に下る道に入る。8分ほどで洞口に着いた。途中の鉄梯子は腐って危険なところもあった。
洞口前で全員で記念写真を撮ってから、12:30入洞開始。複雑な形の洞口だが、大きさは縦横2mぐらいか。曲がりくねった本洞をしばらく進んで、水流のある下層に下りた。水流の底は砂礫で歩きやすかった。深い所でも腿ぐらいまでだった。
御潜門に行く途中で、水流の真上にあるという、上層のコウモリホールに上がった。かなり大きなホールだった。また水流まで下りで、御潜門で右手にハシゴを登る。
ここからは迷路状の中層で、次々と名所が現れるが、初回では測図のどこを歩いているのかよく分からない。かなりのアップダウンがあり、二次生成物も豊富だが、色はあまり純白ではない。
東さんたちが作った風神鍾乳洞の見取り図と近大探検部が1993年に作った測図はおおむね一致していたそうだ。ただ、見取り図は測量したものではないので、通路のつながりはOKだったが、位置関係がずれていたとのこと。この複雑な洞の見取り図がよく書けたなと感心する。
ブラックホールを通り、いよいよ泥地獄。足がズブズブと50cmぐらいもぐりこむ。一方の足を引きぬくため力を入れると、もう一方の足がますます沈み込む。これを何度も繰り返してやっと対岸の岩壁にたどり着く。こんなところが何箇所かあった。さすが聞きしに勝る泥穴だ。昔はもっと泥が深かったとのこと。
全身ベチョベチョの泥だらけになった。それからもカーテンホール、エスケープルートといろいろ回ったが、また泥沼が現れないよう祈る気持ちだった。
御潜門に戻り、水流に出たときにはホッとした。16:00出洞。全身泥まみれのスタイルで、また記念撮影。明るい所で見るとホントによく汚れている。岩手県の東山62洞は泥水のサイフォンを潜るので頭まで泥水でよごれるが、風神鍾乳洞は頭こそ泥はつかないものの全身ネチョネチョの泥がこびりつくひどい穴だ。水越川の河原で、ツナギから何から全部脱いで水洗い。今回はそんなに寒くなくて助かった。
川の対岸にも穴らしいものが見えるので東さんに聞いてみたが、対岸は石灰岩ではないため、穴ではないでしょう、とのことだった。着替えを終えて、17:00に出発。泥には参ったが面白い穴だった。しかもかなりの規模だ。このくらいの穴が東京付近にあったら、すごい人数が押しかけるだろう。今は、静かな山の中にひっそりと洞口が開いているだけだ。今回も、他のパーティーとは出会わなかった。
(小堀 記)