向かい谷洞窟探索

1985年2月3日(日)。晴れ。埼玉県秩父郡大滝村(現秩父市)大血川向かい谷で第7次洞窟探索を行う。参加者は芦田、廣瀬、深田の3名。
今回の目的は、付近の洞窟探索を兼ねて、フローストーンの穴および登竜門の穴の再調査だった。しかし、例によって散開しながらフローストーンの穴に向かう途中、突然、芦田の絶叫が谷間にこだました。
「オーイ! 穴があるぞ! 大きいぞ! 竪穴だぞ!」

場所は向かい谷鍾乳洞と向かい谷のほぼ中間に位置する小露岩帯。洞口は高さ1m、幅50cmで露岩基部に開口している。横穴を2~3m入ると、竪穴状の小ホールとなる。そこから、やや複雑なルートを降りると、やがて狭いクレバス状となる。そこをラダーで降下すると、徐々に広くなる。

そして、最深部のホールに至るが、このホールが実に素晴らしい。まず、土砂とレキが堆積した洞床には、ほぼ一面に獣骨が散乱している(コウモリ以外の骨も多数認められる)。しかも、それが厚く堆積していると思われるので、生物学的資料価値が非常に高いのではないかと推測される。

さらに二次生成物の発達も著しい。とくに洞璧に形成された大小10本のカーテン群。最大のものは縦5m、横1mで、今にも割れ落ちそう。その他にもシャンデリア型のフローストーン、ベーコンやつらら石、石筍などが豊富に認められる。

 この新洞を『向かい谷新洞』と命名することにした。今回の調査の結果、この洞窟は深さ20mの竪穴型鍾乳洞であることが判明した。また、洞窟学的価値が非常に高いと思われる。とくに最探部のホール(『白骨ホール』と命名)は、専門家による学術的調査が必要。それにしても、向かい谷は未知数の魅力を秘めている(向かい谷はPCCにとって第2の倉沢だ!)。
(深田 記)