シシリー島・スロベニア巡検記

仕事の関係でヨーロッパに行った柏木会員がシシリー島にあるちょっと変わった洞窟とスロベニアの Park Skocjanske jame にある鍾乳洞に入ってきました。なお、スロベニアの鍾乳洞がある一帯は「カルスト」という石灰岩地形名の発祥の地です。(2003年10月30日)

2003年9月2日(火)~20日(土)〔日本時間〕にかけて、スイスのローザンヌで開催されている国際学会に出席してきました。この国際学会は、放散虫という海洋性のプランクトンを対象としていて、インターラッドと称されています。インターは、インターナショナルから、ラッドはラジオラリア(放散虫)からとっています。会議の話はきっとつまらないので、巡検の話を以下に記したいと思います。
イタリアのシシリー島で、岩塩の鉱山に入ってきました。鉱山には、2台の車に分乗して入りました。入り口付近の壁はコンクリで覆われているものの、すぐに真白な壁が見えてきて、いよいよ岩塩鉱山の内部へと侵入です。
 岩塩の地層は、層厚数十cmの白い岩塩の純粋な層と、層厚数cmの暗色を呈する不純物の濃集した層とのリズミカルな互層からなります。しばしば、褶曲(地層が曲がっていること)していて、きれいな模様を作りだしています。また、天井から二次生成物が垂れ下がっている所があり、一見、鍾乳石のように見えます。路面にたくさん二次生成物が落ちていたので、いくつか記念に拾ってきました。
ところで、岩塩は軟らかくもないのですがが硬くもないので、道具を使って表面を比較的容易に削ることが出来ます。作業の無事を祈るのでしょうか、キリストや十字架などが掘られている場所がありました。さしずめ、日本でいう小さな祠を穴の中に祭っておくのと同じ感覚のように思えました。
スイスやスロベニア、イタリアとその周辺には、中生代に堆積した炭酸塩岩(石灰質の岩石)が厚く堆積しています。全山、石灰岩からなっているという感じで、石灰岩中の層理面は数cmから十数cmオーダーでリズミカルに発達し、日本で一般的に見られる塊状石灰岩と明瞭に異なる産状をしていました。
シシリーは、乾燥しているためか植生が少なく、山全体を容易に見渡すことができます。車の中から眺めていましたが、洞窟はある層準を除いてありませんでした。ここでいうある層準とは、中生代のうちの三畳紀からジュラ紀前期にたまった石灰岩で、現地でイニチ層と呼ばれていて、比較的塊状の石灰岩で特徴付けられます。巡検地点の石切り場の足下に狭い竪穴があり、目の前の壁に掘削されて現われた竪穴の洞壁が現われていて、そこには豊富なフローストーンなどの二次生成物が観察されました。
さて、場所を移して次はスロベニアに本物?の洞窟を見に行きましょう。到着したのは。Park Skocjanske jame でシュコチアンの洞窟(Skocjan Caves)に入ってきました。チケットを買ってから、1kmほど地上を歩いて入り口に向かいます。
 入り口の近くには、洞窟の簡単な説明板があり、そこで案内のお兄さんが洞窟の簡単な説明と、入洞に際しての注意点を話します。案内板の左下には、カメラマークの上に斜め線が入った絵があり、どうも写真は撮ってはだめということのようです。
そうこうしているうちに、コンクリの壁に取り付けられた鉄製のドアを通って、ついに入洞する時がきました。
最初の数十mは、前面コンクリートで囲まれています。こういう所は、日本人の感覚と随分異なっているなあと感じました。さて、しばらくすると石灰岩の壁が現われて、様々な美しい二次生成物を見ることができます。

 この洞窟は非常に大きく、ホールの広さは最大で目視50m近くあり、それがずーっと続いています。天井からは鍾乳石が多量に垂れ下がり、地面には石旬がにょきにょきと生えていて、そのスケールもやはりでかいです。
小型リムストーンが所々にあり、途中、秋芳洞で見られるものに匹敵する規模のリムストーンもありましたが、残念ながら乾燥していました。写真を撮りたいという衝動を我慢していましたが、観光客の皆さんは結構パチパチ撮っていました。
 途中、高さと幅ともに20m前後の出口を出て、比高差100m近い峡谷の中腹沿いの道を歩きます。峡谷の対岸には、所々にでかい洞口が開いていて、ここが洞窟の巣だということを実感させられます。また、峡谷にかかる橋を何度か渡ったりします。参加者の1人は、ささっと下を見ずに渡っていました。
最後は、50m程の高低差を列車みたいなのに乗って上に移動し、そこが終点のチケット売り場です。ここでビールでも飲んで、お土産を買い込んで、記念写真を撮って、案内者の方々と握手して、スロベニアをあとにしました。
帰ってきたばかりですが、機会があったらまた訪れてみたいと思う今日この頃です。
(柏木 記)

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