瀧谷洞探検ケイビング

PCCでは、瀧谷洞研究のためのルート探索、ルート確認を目的として2024年10月26(土)~27日(日)瀧谷洞にて、ケイビングを行った。

メンバーは、L濱田、SL臼倉、小竹、今野の4名。

アプローチ

12時30分出発。気温18度と比較的暖かかった。
紅葉も色づき始めており、秋の到来を楽しみつつ第一洞口へ向かった。
不思議と普段より荷物が軽く感じた。

川辺に幕営を済ませ、第一洞口に16時頃到着。

洞内活動

16時30分第一洞口より入洞。

今回の目的はひょうたん池の確認と、水無の井戸付近、2024年6月2日の活動で確認途中だったその先の新規ルート開拓および3D測量である。まずはMルートへ向かう。

Mルート始点のトラバースでは濱田が先陣を切ってリギング。

ここは始点がリングボルトだったが、林田が以前の活動でリボルトした為かなり安心感が増した。

今野はその間、個人課題として、3D測量の練習をホワイトプリズン付近で行った。

3D測量 練習と課題

PCCではiPhoneのLiDARを使用した洞窟3D測量の論文を発表して以来、試練の穴のほか、大沢の熊穴大血川新洞といった幾つもの洞窟の全貌を明らかにしてきた。

瀧谷洞においても3D測量も行っており、概要図ではわからなかった部分が新たに発見され、新たな仮説にもつながっている。

しかし、瀧谷洞の3D測量はその大空間さ故にLiDARの届かない部分があったり、竪穴であればSRTで下降しながら測量が必要となる為、3D測量の装備とその技術向上が課題である。

また、測量後の繋ぎ合わせについても有志(小竹隊員)開発のマッピング効率化ツール、Caving Mapperにより劇的な効率化を測ることができたものの、使用にはBlenderの習得など一定のリテラシーが求められる。

私(今野)も今回の3D測量練習でいくつか課題を感じた為、備忘録として下記しておく。
小竹のベストプラクティスを参考に今後改善を図りたい。

装備課題

  • 光源

足りないとLiDARがうまく動かずスキャンできないが、強すぎても白飛びしてスキャン後のディティールが失われる。

  • バッテリー

スキャンするとあっという間にバッテリーを消費する為、外部バッテリーは必須。小竹はバッテリー内蔵のLEDを使用しバッテリーと光源問題を解決していた。

  • ストラップ

今回片手のストラップで挑んだが、両手がフリーに出来ることを考えると首掛けの方が良い。

技術課題

  • SRT下降やチムニーしながらのスキャン
  • スキャン空間を見失わないように壁に近づけすぎない
  • Blenderの基本操作の習得

ロープ回収、揺れる階段

洞内活動に戻る。全員のトラバースを確認したのち、ロープの回収は今野が行った。

中間支点にリングボルトが残っているが、ルート整備は来年以降も必要に応じて行いたい。

このルートはロープ回収の際、揺れる階段をフリーで降りることになるが、なかなか高度感があって楽しいポイントである。下降後はMルート沿いにひょうたん池の場所を確認した。

ひょうたん池

ひょうたん池では水面近くを確認する為、臼倉がロープを設置し各々にSRTで水面近くまで下降した。

水深は目視で10m以上ありそうだ。奥へと水の流れがあり、泥を落としても水が濁らなく美しい。広さもあり、ケイブダイブができればさらなるルート開拓につながるかもしれない。水深3mぐらいの箇所にヘッドライトらしきもの?が落ちていたので将来的には林田に回収を期待したい。

Mルートを進み、水無の井戸へ向かうが…

Mルートを確認しつつ水無の井戸の上を目指し進む。-2の小滝を降りたらチムニーで上方向を目指すのが正解だ。SRTで下降したのち、水無の井戸の方へロープを設置しさらに下降。小竹が水無の井戸のスキャンを行っている間にローププロテクターを使用して響の井戸へ下降した。接触箇所が多いためこのルートも引き続き使うようであればがボルトを打つ必要がある。

高度感があってなかなか綺麗な大空間だ。濱田は先に降りて水の流れる音が聞こえる空間上でボルトを打っていた。

小竹は水無の井戸をスキャン後、職人技でSRTで下降しながら大空間上部をスキャンした。

全員無事下降できたので辺りを散策すると、すり鉢状の穴へと続く入り口と”まるでそっくりの小穴”があり、小竹が先を確認する…と、本当にすり鉢状の穴であることが判明。ここはFホールだったのだ!

つまり、我々が今回SRTで下降した大空間はFホールの上で、かつて林田がフリーで途中まで登攀したさらにその上は水無の井戸へつながっていたことが判明した。ボルトを途中まで打っていた濱田に伝え、そのまま轟川上流部を降りることとした。

轟川沿いに出洞

このルートではSRTが必要ないため、装備を外す。また、出洞予定時刻も大幅に短縮できたそうだったため、3D 測量をしながら戻ることとした。

轟川上流部を今野が担当していたが、途中で空間の認識ができなくなり断念。後ほど小竹に確認したところ光源不足ではないか、とのことだった。やはりまだまだ練習が必要である。

登竜門の滝を降りる過程で全員ずぶ濡れになってしまったので、濱田、今野は早めに出洞することとした。小竹、臼倉はそのまま残って下流部を測量するとのことだった。たくましい限りである。

23時40分ごろに濱田、今野は出洞した。
幕営地に戻ったところで着替えと防寒具を忘れていたことに気づいた。荷物が軽いわけである。ここは焚火禁止なので濡れたままレインを着てシュラフに潜り込む。凍える夜を過ごしたのは言うまでもない。

帰路、ABC整理と撤収

翌朝、ABCに残置されていたゴミを整理し、撤収。持参していたゴミ袋と荷積みロープで大型テントを背負子に固定し下山する。装備もテントも水を吸って行きよりずっと重くなっている。30㎏程度はありそうだ。
帰りは疲労もあるため気を付けてゆっくり下山し、11時30分ごろ無事駐車場へ到着。

今回のABC整理では、滴下水対策に張り巡らせていたタープとその下のテントを撤収した。
残りの残置物についても活動ごとに少しづつ持ち帰って整理を進めたい。

(今野 記)

(小竹追記) 3D測量記録

今回、水無の井戸上部~Fホール~登竜門の滝~轟川のルートの3Dスキャンを実施した。
ただし一部に未スキャン部分を残している。

Fホールの竪穴部分は、水無の井戸上部からSRT降下しながら3Dスキャンした。

降下のためのSRT操作は両手で行う必要がある一方で、3Dスキャンの連続性を保つためにはiPhoneのカメラ部が周囲の景色を認識し続ける必要があるため、ポケット等にしまうことができない。

スマホケースに工作して取り付けた自作フレームを口で咥えてiPhoneを保持することで、安定して両手を使えるようにして作業を行った。今まで試行錯誤を行ってきたSRT中の3Dスキャン作業方法がおよそ確立できたといえる。

今回は新たに今野が3Dスキャンに参加し、Fホールから登竜門の滝までの一部区間を3Dスキャンした。-6の小滝周辺など作業難易度が高いも箇所もしっかり3Dスキャンしてくれており、大変頼もしい。

3Dスキャン作業ができるメンバが増えることで、今後の進捗が大きく進むと期待できる。

(小竹 記)

注意!
瀧谷洞は、一般の方の入洞が禁止されています。