北秋川洞窟探索

2000年4月18日(火)、晴れ。東京都西多摩郡檜原村の北秋川周辺2か所で第1次洞窟探索を行う。
 まず最初の場所は、4月8日の水ノ戸沢第2次洞窟探索の時に車から見え、気にかかっていたところである。このときは「あやしい所があった」「どこ、それ? わからなかった」で終わってしまい、帰りに確認すればいいやと思っていたが、帰るころには暗くなってしまい、確認できなかった。
 正確な場所は、北秋川を遡って行き、檜原小学校を過ぎたところの対岸です。すぐそばに橋がかかっており、そこを渡ったところにある真新しい郵便局の『かんぽ』の施設の手前左から川へ下りられるようになっていました。
 そこで、さっそくつなぎに着替えていたところ、車椅子を押しながら歩いている施設の人(たぶん)がいたので、話を聞いてみたところ、「鍾乳洞があるような話は聞いたことがあるが、場所はわからない」とのこと。それ以上の情報は聞けなかった。
 11:10ごろ、一応、スコップ、ビスケット、水などを持ち、とりあえず、今日はちょっと確認するだけの気持ちで出発する。
 川に下りてみて、まず最初に目に飛びこんできたのが露出している石灰岩である。そして、驚いたことに対岸──つまり、今まで何度も車で通っていた道の真下に小さいながらも、いくつもの穴があいていたのである。
 灯台下暗しとはまさにこのことだと思いながら進んで行くと、今度は頭上でなにかがガサガサと音をたてて動いている。見るとサルの群れがターザンごっこをして(……かどうかはわからないが)遊んでいた。この辺りでサルを見るのは、初めてだったので、うれしくなり急いでカメラを取り出したが、山の上の方へ逃げて行ってしまい、写真には収められなかった。
 気を取り直して川を渡り、穴を覗いて見る。どれも5~10mほどで、溶食されており、二次生成物もあったと思う。中には小さな虫がたくさん飛び回っており、じっくりと観察することもなく出てきてしまった。また、崖の上の方は、行けないこともなかったが、装備なしでは危ないので止めた。
 川の周辺は、それぐらいにして、最初に見えたあやしい岩壁へ向かう。しかし、一番あやしいと思っていたところは溶食こそされているものの、穴らしい穴はなかった。がっかりしながらも、とりあえず岩壁の上も見ておこうと思い、ルートを探す。付近には、さっきのサルの置土産がたくさんあり、異様に臭い。木々に隠れていて、よくわからなかったが、かなりの頭数がいたようだ。
 岩壁の上に上がると、またサルに出会った。今度こそと思い、カメラを出すが、またもや逃げられる。なにくそと、こっちもむきになって何度も追いかけるが、10mくらいまで近付くと逃げられる、の繰り返しで、いっこうに距離が縮まらない。すると、突然落石が2度、3度。わざとじゃあないんだろうが、あきらかにサルが落としている。サルに落石されて怪我をしたとあっては孫の代まで笑われる。ヘルメットを被り、また追い掛けまわす。
 サルまであと少しと、かなり近付いた瞬間、今度は足もとの岩陰から何かが出てきた。姿形はイタチやカワウソのような感じで、しっぽはふさふさと大きかった。大きさは、ネコよりは大きく、キツネよりは小さい。色は黄色、というより黄土色、鴬色に近くたぶんしっぽに白い線があったように思う。寝ていたのか、ふらふらしながら逃げて行ってしまった。あわててシャッターを押したが、写真を現像してみると、ピンボケで結局、なんの動物かはわからずじまい。
 サルも遠くへ行ってしまったので本来の目的、洞窟探索に戻る。この時、かなり高いところまで登っていることに気がつく。『とりあえずちょっと』のつもりが、標高500m近くまできていた(川は標高300mちょっと)。下からは木々に隠れていて、まったく見えなかったが、意外にも岩壁がところどころ、上の方まで続いている。
 さらに上まで登りたかったが、今回は断念して、少し南下しながら降りることにした。南下したところには20cm~50cmのきれいに洗われた石灰岩が、まるで人工的に敷き詰めたような感じで涸れ沢のようになっており、ずっと上まで続いていた。
 さらに南下したところにも岩壁がありそうだったが、車まで戻る。13:00ごろ、車着。トイレと昼食のため、沸沢の滝入り口の無料駐車場へ移動する。付近には平日にもかかわらず、うどん、そばなど食事ができる店が営業しており、パンを持ってきたことを後悔する。
 しばらくして、駐車場の奥から山の上へ続く道があることに気がつく。さっそく馬鹿と煙りは……のごとく、見晴らしのよいところへ行こうと、車から自転車を降ろそうとしたが、今日は積んでいないことに気がつき、とりあえず、車で行けるところまで行くことにした。
 途中、沢を観察しながら上ったが、一番手前の沢には石灰岩がごろごろしており、次ぎの沢は少し、その次ぎの沢からはまったく見られなくなった。結局、山頂の茶屋まで車で行くことができ、付近で昼食をとる。
 眺めのよいところから北側を見渡すと、磁方位でほぼ真北に次に行く予定の岩壁らしいところが見える。この岩壁も前回、車から見え、気にかかっており、「地質図、地形図上からは確かにあやしい」と、芦田さんもご推薦の場所である。また、磁方位で約020°のところにも大きな岩壁が見えるが、地図を持ってきていなかったので場所がよくわからない。とりあえずポータブルナビに現在位置をプロットする。家に帰ってから確認すると、『高黒岩』『つづら岩』と記れているところらしい。その約1キロ北には大岳鍾乳洞があるので石灰岩の可能性大だが、登山道もあるような場所なので期待薄な気がする。
 14:00ごろ、次の目的地へ向かうため、山を降りる。神戸岩方面へ曲がる入り口付近から先ほどの岩壁がよく見えたが、北秋川沿いに進むと、やがて道路からは見えなくなってしまった。少し進みすぎたかな? と思った辺りで川をのぞくと、石灰岩がある。そして、その周りにいくつもの穴を確認。「あれっ? こんなところに」といった感じの里穴である。さっそく車を止めて見に行ってみる。
 あまり期待はしていなかったが、どれも10~20m近くあり、ちゃんと二次生成物もあった。奥の方は泥で狭くなっていて終っているらしいが、つなぎに着替えておらず、汚れるのが嫌だったので完全には確認していない。着替えて確認しようかとも思ったが、「どうせ里穴だしたいしたことはないだろう」という思いと、そばに釣り人がいて、恥ずかしかったので、やめてしまった。「どうせ私は軟弱ケイバーさっ!」と思いつつ、やっぱり確認しとけばよかったかな? とちょとだけ後悔の今日このごろ。
 15:00ごろ、もう少し上流にもあるかな? と車を移動させるが、石灰岩がまったくなくなってしまったので対岸に渡り先ほどの岩壁を探しに行く(でも、もっと上流には白岩沢という地名あり)。なんとなく、それらしい感じのする場所だったが、すぐにます釣り場まで来てしまった。以前、小山さんがます釣り場のそばに神戸鐘乳洞があると言っていたので、この辺りは調べているはずと思い、帰ることにした。
 帰路、檜原小学校まで行く途中、沢づたいに上流へ行く道を発見(たぶん千足沢)。車で行ける所まで進む。『あと300mで滝』の看板があり、岩壁が見えるが、沢には肝心の石灰岩がまったく見当たらず、小さな魚が泳いでいるだけだった。時間もないので、今日の探索はここで打ち切った。
 
まとめ
 全体的にみて、あまり大きな穴は期待できそうにもない印象をもった。が、そこそこの穴ならば、まだありそうな気はする。檜原小学校の裏には石灰岩を採掘したらしい跡があり、これを見るとかなりの層厚があることがわかる。
 今回は、檜原小学校下の少し下流をまったく探索しなかったので心残りがある。もし探索する機会のある人がいれば、この付近を見てもよいだろう。なお、川の崖上の穴はロープが必要である(とくに技術を必要とするほどではない)。沸沢の滝周辺には食事場所、バス停、トイレなどの施設もしっかりしているので、お気楽探索&ケイビングには、なかなかいい場所であろう。なお、この辺りの沢は(沸沢の滝含む)地元の人の飲料水の水源となっているので、それなりの配慮を必要である。
(小野 記)